「五稜郭」や「はるばるきたぜ 函館~」で知られ、北海道でも有数の知名度を誇る観光都市、函館。江戸時代末期、ペリーの来航により開港した2つの港のうちの1つであり、長い歴史を持つ地域である。そして、現状では新幹線が到達する最北の街としても有名だ。今回、その函館へ初めて足を運ぶこととした。
通常、北海道への移動手段として用いられるのは飛行機だろう。しかし、前述したように函館までは新幹線が開通している。そこで今回は、せっかくだからと新幹線を利用することにした(飛行機が怖いからではない)。
東京から函館北斗まで5時間以上に及ぶ長旅。せっかくだからとグリーン車を利用したところ、一般車両との違いをあちこちに感じることに。
見よ、この座席の広さを。足置きもあった。
長い移動時間を経て、ようやく北の大地に到着。新幹線から降りると思わず「涼しい…」と声が出た。
9月半ばは北海道でも暑い日が続くが、東京とは暑さのレベルが違うと実感。北国に来たという実感を得て、移動の疲労はあるもののテンションは上がった。
ちなみに、北海道新幹線の終点駅である函館北斗は、厳密に言うと函館市ではない(駅の所在は北斗市)。函館北斗駅から函館駅までは在来線を使う必要があり、440円とやや高めに感じる運賃を支払い移動した。
到着した時点でだいぶ日は傾いていたこともあり、本格的な観光は翌日以降とすることに。ホテルのある湯の川温泉で、夕飯は函館名物とされる「塩ラーメン」を食すことにした。
あっさりとしていて食べやすい。窓からは海も見渡せる抜群のロケーションだった。
2日目
朝から天気も申し分なく、この日は函館市から外に出て「洞爺湖」を目指すことに。かつてサミットも開かれた場所へは、特急「北斗」を利用しなければ膨大な時間がかかってしまう。前もって特急出発の時間をチェックし、函館市電で函館駅へ。
しかし、ここでトラブルが発生。
湯の川温泉から函館まで市電を利用したところ、やや遅延が生じたこともあり「北斗」を1本逃すことに。東京と違い、地方では多少の遅延を計算に入れておくべきだと、待機時間で学ことになった。
予想外の出来事はありながらも、「北斗」に乗って洞爺駅まで。特急とはいえ函館~洞爺は2時間近くかかる。東京~名古屋よりも時間がかかることからも、北海道の広さを理解できた。
長い列車移動を終えて、洞爺駅に到着。駅は閑散としていたものの、広く綺麗でありトイレも清潔だった。
洞爺駅と言っても、洞爺湖のすぐそばにあるわけでなく車移動が必須だ。仮に徒歩で行こうとするならば、峠を一つ越える覚悟がいる。そんな覚悟はないため、ここは無難にバス移動を選択した。
到着。予想以上に広く、そして綺麗な湖が広がっている。とりあえず湖周辺を見て回ろうかと考えていると、目に飛び込んできたのが…。
特に遊覧船に乗る予定はなかったが、これは乗るしかないと判断。ちょうど出港直前とタイミングが合ったのも良かった。いざ、湖上へ。
水がとても綺麗。
遊覧船は中島(大島、弁天島、観音島、饅頭島の4つの島の総称)を巡る航路となっており、夏季期間はそのうちの一つ、大島への上陸が可能である。と、船内でガイドさんによる説明があった。
しばらく湖上を航行した後で、船は大島に到着。ここで下船して島を散策するもよし、そのまま船で帰港するもよし、自由に行き先を選択できる。自分は迷わず島散策を選択した。せっかく来たからね。
大島には神社やカフェが設置されているほか、申請すればハイキングコースを歩くことも可能。
ちなみに、ハイキングコースは3つ用意されており、3時間以上かかるものも(もはや登山では)。もちろん、自分はもっとも短いコースを選択した。
思っていたよりも整備されていない道が続く。道中は倒木で道が塞がれている箇所もあり、道に迷いそうになることもあった。絶対にないとはいえ、熊でも出てくるのではないかと密かにビクビクしていた。
なんだかんだで1時間以上歩き、出発地点に到着。帰りの遊覧船に乗り込んだ。
遊覧船を降りると、だいぶ良い時間帯に。来たとき同様、「北斗」に乗らなければ膨大な時間を費やすことになるため、タクシーを利用して駅まで。洞爺駅は歩いてすぐが海であり、列車到着時刻までここで時間を潰した。
函館駅まで到着すると、すでに日も暮れ暗がりが広がっていた。そして、ここまで食事の記載がなかったと思うが、それもそのはず。
タイミングが合わず、朝から何も食べていない。
流石に空腹でふらふらとなっていたため、今回の旅における一つの目的でもあったジンギスカン料理を食べることにした。
「本場のジンギスカンは臭みがなく食べやすい」と店が謳っていただけあり、とても美味!ただ、自分の胃の許容量を把握しておらず、食べ放題にしたのだけは失敗だった。それでも、十分に満足できる食事だった。
3日目
2日目は函館市外に出てしまっていたので、この日は函館の名所巡りをすることに。まず、函館と言えば誰もが思いつくはずの観光地、「五稜郭」を目指した。
五稜郭へと続く道は函館駅前よりも賑わっていて、ここが中心地なのか…という印象。五稜郭前には「五稜郭タワー」があったため、まずはこちらに寄ることにした。
素晴らしい眺め。上から見ると、本当に星型の形をしているのだとよくわかった。タワー内は資料館のような施設になっており、それによると和洋折衷とも言うべきデザインらしい。
余談だが、タワー上階に向かうエレベーターは移動中に照明が落とされ、壁に土方歳三や榎本武揚の写真が青白く照らされる。ホーンテッドマンションのような演出で少し笑った。
写真のように、タワー内には五稜郭の歴史をわかりやすく伝えてくれる工夫も。景色以外にも楽しめる要素があるのは予想外だった。
やたらと叙情的で書き手の熱い想いが伝わる一文
タワーを降りてからは、いよいよ五稜郭へ。園内は人がまばらだったこともあり、色々とじっくり見ることができた。
施設内最大の建物が、こちら函館奉行所。残念ながらオリジナルは焼失してしまったそうだが、職人たちの技術の結集により当時の姿のまま再現されたそうだ(全てではないけど)。
昔はこうした職場で皆働いていたんだな…と思いながら施設を回る。函館の冬は相当寒かったのではないだろうか。
お奉行気分が味わえる風景。皆が平伏している姿が目に浮かぶ
惜しむらくは、当時の奉行たちの生活する空間までは復元されていなかったこと。いつか完全な奉行所が復元されれば良いなと思った。
午前中に五稜郭を回り、午後は大沼公園に向かうことに(今日は函館市内を回ると言ったな、あれは嘘だ)。
大沼とは、駒ヶ岳周辺に点在する大小さまざまな沼の総称である。沼から眺める駒ヶ岳の姿はそれは雄大なのだとか。距離についても、洞爺湖ほど移動時間はかからなかった。
駅はとてもレトロ。
やや怪しい空模様の下、駅から10分程度歩くと大沼公園に到着。想像していたより遥かに広かった。洞爺湖もそうだが、北海道は全てのスケールが大きくて東京育ちの身としては圧倒される。
公園内を散策していると、見えてきたのが遊覧船。え、また?という感じではあるが、せっかく観光に来たのだからと今回もチケットを購入。ちょうど団体旅行の人たちも訪れており、同じ船に乗ったためやたらと賑やかだった。
必要最低限の説明のみだった洞爺湖の時と違い、今回の遊覧船はガイドさんがよく喋る。冬は沼が凍るので、スノーモービル?などができるらしい。ちなみに、洞爺湖は非常に深い湖で凍らないと聞いていたため、ここでも違いがあるなと感じた(そもそも湖と沼だが)。
来た時から薄々感じてはいたが、駒ヶ岳は分厚い雲に覆われ文字通りの雲隠れ状態。ガイドさんも非常に困った様子で「噴火で山肌が馬に似た感じになったから駒ヶ岳になったんですよ…まぁ見えませんけど」と言った調子だった。
ここでは洞爺湖のように途中下船はなく、30分程度で遊覧は終了。電車の時間も気にしながら、再び園内を散歩する。
ここはテノール歌手秋川雅史の名曲「千の風になって」が誕生した地であり、そのモニュメントもあるとのこと。特に曲のファンというわけではなかったが、向かってみることにした。
これだけ。うーん、もう少し何かあっても良かったような…。後から来たカップルが「え⁉︎これだけ?」と驚いていた気持ちがよくわかる。
モニュメントのある場所から見える景色は素晴らしかった。
その後もしばらく歩いた後で、函館への帰路に着く。もちろん、これで観光を終わりにするつもりはない。最後に函館の有名スポットである「函館山」から、美しいと評判の夜景を見る計画を立てていたのだ。
駅から函館山までは上り坂が続く。
道中に函館護国神社があったため、寄ってみる。人影は全くなく、上空を無数のカラスが飛び交っていたため、やたらと雰囲気があった。
函館山まではロープウェイを使用。15分に1本の頻度で乗れるため、それほど待たずに山頂まで行ける。乗車前に「天候不良で視界が悪いですが大丈夫ですか?」と念を押されたが、余程でなければ大丈夫だろうと思いロープウェイに乗り込んだ。
余程の天候不良だった。登った際は夕方で、辛うじて街の見える状態だった。これなら、夜景もある程度は見えるかと思っていたところ……。
何も見えない。
何も、見えない。予報ではこれからも状況は変わらないとのことだったため、泣く泣くロープウェイに再度乗り、下山することにした。
怪獣とか出てきそう。
こうして、3日に及ぶ函館観光は終わりを告げることになった。最後だけやや残念な結果になったが、北海道のスケールの大きさ、自然の豊かさをほんの一握り程度でも体感できた良かった。
この調子で、今度は小樽や釧路に行ってみたい…。
北海道探索は始まったばかりなのだ。
「新函館北斗駅」がある北斗市のマスコット「ずっしーほっきー」。この絶妙な不気味さが人気らしい。
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